【音楽理論No.4】ダイアトニックコードの数学的構成法

こんにちは。@ackcvanilla1(Rana_34164)です。

前回ではピタゴラス音律の構成法について学びました。ピタゴラス音律は、各音にもっともよく響く関係が次々連なって構成された音律ということでしたね(最後だけしわ寄せがきてしまいますが)。

さて、音律については、ピタゴラス音律と平均律について学んだので十分とし、今回からはコード進行の話をメインに書いていこうと思います。コード・コード進行と一言でいっても、その構成法は無限であり、つまり音楽は無限の可能性を秘めているので、自由にやるのが基本ですが、もっとも簡単な例を考えて、それについて色々数学的裏付けを与えることで、「誰が聴いても一定程度綺麗にきこえる」コード進行を構成することができます。

まず今回は、ダイアトニックコードの導入をしようと思います。

数学的準備

ある音 f_0 を起点としたオクターブの区間[f_0,2f_0]を,ある規則でn+1個に離散化した音律

{\mathbf f}_n=\{f_0,~f_1,~f_2,\ldots,~f_{n-1},~f_n=2f_0\}

を構成し,さらに,音律 {\mathbf f}_n から,m 個の要素を選んだスケール(部分集合)

{\mathbf s}_m=\{f_{i_1},~f_{i_2},\ldots,~f_{i_m}\}

を構成し,各音のオクターブを次々ととって並べた音列

{\mathbf s}=\{f_{i_1},f_{i_2},\ldots,f_{i_m},f_{i_{m+1}}=2f_{i_1},f_{i_{m+2}}=2f_{i_2},\ldots,\}

を考える.

スケールに紐付くコード(4和音)の集合体

さて,スケールをオクターブ拡張した音列 {\mathbf s} から,スケール{\mathbf s}_mの各音 f_{i_j}~(j=1,2,\ldots,m)をルートに持つ4和音

{\mathbf c}_j=\{f_{i_j},f_{i_{j+\alpha}},f_{i_{j+\beta}},f_{i_{j+\gamma}}\}

を構成し,それを集合族としたもの

{\cal C}=\{{\mathbf c}_1,{\mathbf c}_2,\ldots,{\mathbf c}_m\}

を考えるとする.{\cal C}の構成法,すなわち\alpha,\beta,\gammaの選び方は無限に存在する.

ダイアトニックコード

{\cal C}の構成法のうち,\alpha=2,\beta=4,\gamma=6とした場合,すなわちルートの音から一つ飛ばしで選んで4和音を作る方法で構成した{\cal C}を,ダイアトニックコード{\cal C}_dという.

{\cal C}_d=\{{\mathbf c}_1,{\mathbf c}_2,\ldots,{\mathbf c}_m\},

{\mathbf c}_j=\{f_{i_j},f_{i_{j+2}},f_{i_{j+4}},f_{i_{j+6}}\}

メジャーダイアトニックコード

例としてメジャースケールのダイアトニックコードを構成する.ある音 f_0 を起点としたオクターブの区間[f_0,2f_0]を,ピタゴラスの方法で13個に離散化したピタゴラス音律Ver.3

{\mathbf f}_{12}=\{f_0,~f_1,~f_2,\ldots,~f_{11},~f_{12}=2f_0\}

を構成する.

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さらに,ピタゴラス音律 {\mathbf f}_{12} から,周波数比が簡単な 8 個の要素を選んだメジャースケール(部分集合)

{\mathbf s}_8=\{f_0,~f_2,~f_4,~f_5,~f_7,~f_9,~f_{11},f_{12}=2f_0\}

を構成し,各音のオクターブを次々ととって並べた音列

{\mathbf s}=\{f_0,~f_2,~f_4,~f_5,~f_7,~f_9,~f_{11},~f_{12}=2f_0,~f_{14}=2f_2,~f_{16}=2f_4,\ldots\}

を考える.このとき,メジャースケール{\mathbf s}_8のダイアトニックコード{\cal C}_dは以下のとおり.

{\cal C}_d=\{{\mathbf c}_1,{\mathbf c}_2,\ldots,{\mathbf c}_8=2{\mathbf c}_1\},

{\mathbf c}_1=\{f_0,~f_4,~f_7,~f_{11}\},

{\mathbf c}_2=\{f_2,~f_5,~f_9,~f_{12}\}=\{f_2,~f_5,~f_9,~2f_0\},

{\mathbf c}_3=\{f_4,~f_7,~f_{11},~f_{14}\}=\{f_4,~f_7,~f_{11},~2f_2\},

{\mathbf c}_4=\{f_5,~f_9,~f_{12},~f_{16}\}=\{f_5,~f_9,~2f_0,~2f_4\},

{\mathbf c}_5=\{f_7,~f_{11},~f_{14},~f_{17}\}=\{f_7,~f_{11},~2f_2,~2f_5\},

{\mathbf c}_6=\{f_9,~f_{12},~f_{16},~f_{19}\}=\{f_9,~2f_0,~2f_4,~2f_7\},

{\mathbf c}_7=\{f_{11},~f_{14},~f_{17},~f_{21}\}=\{f_{11},~2f_2,~2f_5,~2f_9\}

まとめ

メジャーダイアトニックコードは,数あるコード体系の中でももっとも単純なものであるが,添え字の規則性等に着目して考えたり考察を試みると奥が深い.音楽は基本的には自由ではあるが,ダイアトニックという縛りを入れても,そこには幅広い音楽的広がりを与えている.次回以降は,その幅広い音楽的広がりとして,根音進行とドミナントについて説明する.